ストイックなのか貪欲なのか
「仕事をバリバリとやっているようす」を見て「ストイックな仕事ぶりですね」なんていう人が多い。
でも、仕事ってストイックっていうかなあ。ぼくは仕事をバリバリとやっている人は「貪欲」だと思う。
だってそうでしょう。ストイックは禁欲って意味だけど、そんな状態の人は仕事をしないで瞑想をする。仕事をしないでただあるがままを受け入れる。仕事をしないで即身仏になる。
ストイックと貪欲は真逆の言葉だ。
自分が仕事するとき、わりと欲で仕事するとこが多いから、そう思うのかもしれない。遊ぶ金ほしさに仕事をしています。強盗みたいだ。
文章のうまさってどうすればいいのか
先輩のライターに酒の席で
「もっと文章がうまくなりたいですがどうしたらいいですか?」
って相談したことがある。
返ってきた答えは想像の斜め上だった。
「うまい文章っていうのは幻想なの。斎藤君はフリーライターしかやったことがないから、修行したいって気持ちもわかるけど。でも、逆におれは斎藤君みたいな文章って書けないしさ。いいじゃん。
おれは広告業界でも働いていたし、きれいな文章もたくさん書いたけど、フリーライターになってからは前職みたいな文章って全然書いてない」
ヒェー。圧倒的な現場感のある言葉ですね。そういうものなのか。
非常に納得できる答えなんだけど、「幻想」とまで言い切っちゃうのは、なんか怖い。うまい文章が幻想だとしても、下手な文章って明確にあるしなあ。
手品師のための即売会にいった
手品師に集団で論破されたい - デイリーポータルZ:@nifty
この記事で知り合った手品師の戸崎さんが主宰している「マジックマーケット」に行ってみた。
マジックマーケットとは、手品師向けの同人誌即売会。
この場合の同人誌とは「手品のタネ」が書いていある本のこと。この業界では「レクチャーノート」というみたい。テクニカルタームですね。
トーマさんのブースで売っていたレクチャーノートは、1冊3000円。高いのか安いのかさっぱりわからない。
試しに「ちょっと中身立ち読みしていいですか?」って聞いたら
「あ、多分一般の人が読んでも全然意味が分からないからいいですよ」とのこと。
読んだら本当に分からなくて、おおっという気分になる。
休憩所で休んでいる人たちは、みんなトランプを出してごちゃごちゃやっている。植田さんいわく
「あれはこの場で知り合った人たちが、お互いに初対面なのに手品を見せ合っているんですよ……地獄でしょ?」
手品地獄……。世の中いろんな種類の地獄があるなあ。
ちなみに、指圧師は初対面でお互いの肩をもみあったりしないし、ウェブライターも初対面でお互いの記事を読みあったりしない。
きっと手品師の人ってそもそもの性質がフレンドリーなんだろう。
最後に野島さんのブースで手品のタネを一つ買って帰宅。1500円。
とにかく異世界って感じで、よかった。
個性的なウェブメディア5選
ウェブライターの仕事をしているので、メディアをよく読むようになる。そうすると、それぞれの特徴がわかってきて、けっこうおもしろい。
ぼくが寄稿したことのあるメディアから、個性的なものについて書いてみたい。
デイリーポータルZ
15年前からやっている老舗のおもしろサイト。人気のあるサイトなのでSNSやはてブで記事を見かけたことがある人も多いと思う。
でもそれだけじゃもったいなくて、古い時代の名作記事を掘り起こして読んでみると楽しい。スマートフォンもSNSもなかった時代のおもしろさは今とはやっぱり内容が違う。ちなみに過去ログは余裕で1万件以上あります(年間1000記事くらい出していて、15年続いているから)
好きな記事はこれ。どっちもスマホじゃなくてパソコンから観た方がいい。
みんなのごはん
ぐるなびがやっているグルメサイト。でもグルメに関係あるかどうかギリギリ、って感じの記事も多い。ちょっと前まで、女くどき飯やペンと箸など超大人気ウェブまんがが連載されていた。
本格的なグルメレポートならほそいさんとtakiさんの過去記事がおすすめ。どっちも記事を読んでいきたくなる。
ほそいあや カテゴリーの記事一覧 - ぐるなび みんなのごはん
Taki カテゴリーの記事一覧 - ぐるなび みんなのごはん
エキサイトレビュー
ドラマや書籍などのレビューが載っている。速報的な物ではなくて、内容を掘り下げているのが特徴。
ジブリなど、定番の人気映画がテレビ放映するタイミングで、とんでもなく重厚なレビューが載ることがある。はー、レビューっておもしろいんだなあーという感じ。こんなの無料で読んじゃっていいの?
今夜金曜ロードSHOW「平成狸合戦ぽんぽこ」「左」の高畑勲だから描ける真実、滅びのリアル - エキレビ!(1/4)
今夜金曜ロードSHOW「おもひでぽろぽろ」みんな同じだったねと安心するレトロブームを批判している - エキレビ!(1/3)
ねとらぼアンサー
「ねとらぼ」はネットの中のニュースを採り上げるサイトなんだけれども、派生サイトの「ねとらぼアンサー」は「みんなが知らなかったことに答えるサイト」。
「甲子園の土、その後どうしてますか?」 元甲子園球児たちに聞いてみた (1/3) - ねとらぼ
みたいに、「言われてみると疑問だな」ってやつから
「首相」と「大統領」ってどっちが偉いの? そもそも何が違うの? - ねとらぼ
みたいに、妙に勉強になるものまで、疑問に答える記事がたくさん載っている。パラパラ見ていて損はしない感じだ。
ぼくが好きなのは東大クイズ研究会の人の連載コラム。クイズマニアの視点の記事で、正直書いてあることの半分くらいしか理解できない。
でもそれがいい。すごみがひしひしと伝わってくる。
なぜクイズプレイヤーは2015年から誤答するようになったのか? またはクイズとテクノロジーのいとも奇妙なる蜜月 (1/3) - ねとらぼ
これとか、タイトルだけでビリビリくる。「なぜ」っていわれているけど、そんなこと考えたことないよ。
SUUMOタウン
「街」をからめたエッセイが載っているサイト。
基本的にその街に住んでいた人視点の文章なので「愛のあるディス」が時々出てくる。これがリアルで「本当にこの街が好きなんだな」ということがよくわかる。
住んでた街って愛憎入り交じっていて、きちんと語ろうとすると、褒めるだけじゃ終われないよね。
銀座の隣の「新富」で、東京のよそ者として生きる - SUUMOタウン
私だけが知っている、秘密の優しい「湯島」 - SUUMOタウン
ほんのり漂う物悲しさが心地よい。我が道をいく下町「尾久」 - SUUMOタウン
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今の時代、ほとんどの人が個別の記事や、気に入ったライターのSNS経由で記事を読んでいると思う。でもメディアの特徴を知っていると、おもしろさが増える。ウエブメディアが増えているからこそ、識別する価値がある。
もちろん他にも個性的なメディアっていろいろある。第2回も書こうかな。
文体よりもインプットが重要
ウェブ記事を書くときに「ですます調」で書くか、それとも「である調」で書くか。
デイリーポータルZでデビューしたので、だいたいのウェブ記事は「である調」で書いてきた。なんなら「ですます調」なんかで記事書けるか! みたいな気持ちがあった。
でも、最近「ですます調」で書いているものが多い。それでもちゃんと書けているし、ちゃんと自分らしさも出ているような気がする。これ、どっちでもいいって事なんだと思う。
きっと重要なのは、インプットの仕方なんだろうな。取材したときに、何を見て、何を面白がって、何を見逃すか……。ってところに、書いている人のどうしようもない個性が出る。
そう思うと、アウトプットのやり方は、一つに決めなくてもいいんじゃないかな。媒体から頼まれればその通りに書けばいいし、自分で決めるんだったら、なんかその時のノリとかで……。
なんかそんな風に思っています。(このブログはごちゃ混ぜです)