ふしぎブログ

指圧師・ライター斎藤充博の日記

短歌はウェブの企画を考えるのに使える

心が弱っているときに読む2大「ひろし」があって、それは穂村弘森博嗣だ。穂村弘の短歌の解説本ももう何冊も読んでいて、同じ短歌の解説がが何度も出てくるのだけれど、読むと心がおちつく。

 

そんなわけで穂村弘の『ぼくの短歌ノート』を買ってしまった。

 

単純に短歌を鑑賞するのが好きなんだけれども、短歌モードは仕事にも使える。ウェブ記事のネタ出しだ。

 

短歌って短い文章の中に「共感」と「驚き」が入っていて、ウェブ企画にそのまんま使えるような物も多い。

 

たとえば石川啄木の有名な短歌で

 

ふるさとの訛なつかし

停車場の人ごみの中に

そを聴きにゆく

 

 

というのがある。これ、穂村弘は何回もいろんなところで「聴きにゆく」というところがすごい、ふつう懐かしくなっても聴きに行かない、といっているんだけど、本当にそうだと思う。

 

で、これってこのままデイリーポータルZの記事にもなりそうなのだ。「バス亭で待っている老人たちは何をしゃべっているのか」みたいな。ありそうでしょ。実際に飲食店でカップルの会話を盗み聞きする記事がある。

 

他にもこういうのもデイリーポータルZの記事になりそうだ。

 

動物園に行くたび思い深まれる鶴は怒りているにあらずや 

伊藤一彦

 

デイリーの記事だったら「怒っているように見える動物ランキング」かな。動物園に行って写真を撮りまくる記事。一位が鶴ね。実際に動物に怒るも何もなくて、自分の内面を重ね合わせているだけなので、自分語りの記事になるだろう。

 

そのまんまパクることはしないので、短歌のモチーフになっている要素を入れ替えるだけでも良い。(石川啄木とかだったらそのまんまパクっても怒られないと思うけど、ふしぎ)

 

もっというと、短歌を鑑賞ししたモードのままで企画を考えていると、いいのがたくさん出てくる。たぶん短歌を鑑賞すると心が強くなるのだろう。

 

 

十万円に思いをはせる自動販売機

散歩をしていたら「散歩をしていてよかった!」と心の底から思えるような自動販売機を見つけることができた。

 

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なんとなく全景からも「いい」においが伝わってくると思う。詳細に見てみよう。

 

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まず自販機自体にキャッチコピーがついているのがすごい。

「日本一の格安飲料」「安くて美味しいがトレンディー」……言葉のカラッポぶりはいいとして、全力で自分のところの自動販売機を肯定する姿勢に感動する。

 

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実際に安い。それもそのはず、特価だから。「特価」「特価」「特価」「特価」「特価」……。文字なのに騒音を感じさせるという技術だ。

 

中央のペットボトルには手書きの文字で「良く売れる」と書いてある。このジュースがよく売れなさそうなのがたまらない。文字は丁寧に書かれている。

 

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ジンジャーエールには「めずらしいジンジャーエール」と書かれている。なにが? メーカーは神戸居留地だった。

 

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「本当の甘酒です」おまえは山岡士郎か。

 

……と、まあここまでは自分の自販機で物を売りたいという「欲」で説明できるのだが、最後の最後に説明のつかない文章が出てくる。

 

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十万円に対する様々な角度からの執着。書いた人の価値観が全くわからない。

 

この自販機、実際安いのに買う気なくさせるオーラが圧倒的だ。見ていたらじっとりと汗をかいてた。まだ寒いのに。

ふしぎ指圧3周年イベント 4/17下北沢(締め切りました

(締め切りました)

 

だれがこんなに続くと思ったことでしょう。2016年の3月でふしぎ指圧は3周年になりました。とてもうれしいので3周年記念のイベントを行います。

 

ふしぎ指圧3周年イベント~ふしぎ指圧の失敗~

日時:4/17(日)18:00~20:00くらい

場所:下北沢BUSHITSU(下北沢駅から徒歩3分)

BUSHITSUシモキタザワ|下北沢の部室感覚コワーキングスペース

料金:1,000円くらいのつもりだけど未定(ピザか何か付けます)(赤字確定です)

参加資格:下北沢ふしぎ指圧に来たことある人か、斎藤の友達

 

雰囲気:小さなコワーキングスペースで、あんまりおしゃべりが上手じゃないライターがしゃべります。持ち込み自由なので、そのへんのコンビニでビール買ってきてだらだら飲みながら話を聞いてください。軽食用意しますが、なんかおつまみ持ってきてくれたらうれしいな。

 

内容:インターネットで大絶賛されている下北沢ふしぎ指圧。しかし本当にそんなにすばらしいものなのだろうか。本イベントではふしぎ指圧の代表である斎藤充博自らがふしぎ指圧の失敗について語る。あとライターの仕事がらみでインターネットに書けない失敗も語る。一人では話が持たないかもしれないのでゲストに来てもらおうかなって思ってもいますが、誰も来ないかもしれません。

 

 

 

 

池上彰が世界を解説した本を何冊も買ってしまう

池上彰が世界情勢を解説した本がいろいろあるのだが、もう10冊くらい買っている。読むたびに「わかりやすい!」と感動しているのがヤバい。わかりやすいのに、なにもわかっていない。

ちょっと前に居酒屋で一人で飲んでいたら、アメリカ人観光客と話すことになった。ちょうどその時に池上彰の本を読んでいたので「オバマケアについてどう思うか?」と聞いてみた。

オバマケアとは何か。今ではもうわからない。でも本を読んでいた時はわかった気になっていたし、現地の人と議論をしたいと思ったのだ。

池上彰、罪だなあ。

オウンドメディアはシャチホコかなんかなのだと思う

ライター仕事の中心になっているのは今はやりの「オウンドメディア」。ニフティの「デイリーポータルZ」や、ぐるなびの「みんなのごはん」なんかが代表だ。

 

オウンドメディアの仕事を人に説明すると、こんな質問をされる。

「なんでそんな儲からないことで原稿料が貰えるの? 雑誌みたいにだれかがお金を出すわけじゃないよね?」

たしかに、なんでこんなことやっているんだろう、企業は……。と今までずっと何年間も思っていたけど、最近だんだんわかってきたような気がする。

 

オウンドメディアというのは名古屋城にあるシャチホコみたいなものだと思えばいい。

 

シャチホコは何かの役に立つわけじゃない。みんなが人が見て「あんなもの作るなんてすごいなあ」とかんたんに納得できる。企業や商品に価値を持たせるブランディング、みたいな作戦とはまたちょっと違って、まろやかな示威行為みたいな感じだろう。大衆をなんとなくビビらすのだ。

 

シャチホコはもうける必要もない。シャチホコに変な広告が貼ってあったら「ああ、広告なんだな」ということになって「すごい」の方に意識が行かなくなってしまう。

 

(でも今は広告がたくさんついている方が「すごい」と思われやすいという、ちょっとヘンな倒錯した現状がある)

 

だからオウンドメディアは「すごい」ものを作った方が絶対にいい。

 

予算をかけられないのか、内容ゼロの「THE・無」みたいな物をたくさん更新しているところもよく見るけれども、それはシャチホコにはならない。田舎のおっちゃんが作っているセメント像だろう、それは。

 

予算やコストがかけられないということだったら、シャチホコを作るなんて考えない方がいい。「すごくない」というのがたくさんの人の目に触れても、単純にマイナスなんじゃないかと思う。

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