状況がエスカレートして行くさまを書くと記事が「締まる」
デイリーポータルみたいな、体験を記事にするときの話。
取材をしてきて、どの部分を書こうか、どういう順番で書こうか、というのは悩ましいところである。でも最近自分の中では基準が出てきた。それはできるだけ「状況がエスカレートして行くさまを書く」ということだ。
状況がエスカレートするように書くと、読んでいる側から見て、読み進めたぶんの「ごほうび」を貰っているような感覚になる。
たとえばこれなんだけど
【書いてある順】
1.小学生向けの本を面白がって買ってくる
2.家の中で本のマネをしてみる
3.外に出て試してみる(公園に子どもがいる)
4.外に出て試してみる(公園から子供がいなくなる)
5.集団でやり始める
というふうに状況がエスカレートしている。でもこれ時系列でいうと本当はこうだ。
【時系列】
1.小学生向けの本を面白がって買ってくる
5.集団でやり始める
2.家の中で本のマネをしてみる
3.外に出て試してみる(公園に子どもがいる)
4.外に出て試してみる(公園から子供がいなくなる)
人が集まる都合上、実は集団でやっていた方が先だった。
まあこれは最後に持ってきた方が良い、というのはわかりやすいところだと思う。
小技としてけっこう使えるのは3と4のところだ。
3.外に出て試してみる(公園に子供がいる)
4.外に出て試してみる(公園から子供がいなくなる)
公園ではずっと本に書いていあることを試しているだけなので、状況はエスカレートしていない。しかし、そこをなにかしらエスカレートしてゆくところを見つけて書くと、ぐっとストーリー性が出て読みやすくなる。
この方式をうまく使えるようになると、ネタそのものが弱くても、それなりに読めるようになる。
たとえば最近だとこれ。
【書いていある順】
1.バラエッグを作る
2.バラエッグを食べるとうまい
3.実はバラエッグが好きすぎて定食屋で働いていた
4.その定食屋はもうつぶれたから食べられない
後半に行くにつれバラエッグの価値がどんどん上がっているのがおわかりいただけたでしょうか。これは晩御飯食べているだけの話なんだけど、まあまあ人気出た。
ちなみに時系列だとこんな感じ。
【時系列】
3.実はバラエッグが好きすぎて定食屋で働いていた
4.その定食屋はもうつぶれたから食べられない
1.バラエッグを作る
2.バラエッグを食べるとうまい
これでもダメじゃないけど、盛り上がりに欠けるのはなんとなくわかると思う。
そういえば「状況のエスカレート」が一番わかりやすいのはこれだ。(ぼくの記事じゃないけど)
「状況のエスカレート」が「数字」と「ビジュアル」でわかるのがすごい。これはドラゴンボールのフリーザ戦の「戦闘力」と「変身」にも通じるところがある。
タイトルで、状況がエスカレートして行くさまを書くと「締まる」と書いた。
じゃあ逆にそうじゃない記事はどうなるかというと「ユルい」といわれるようになる。どんなに取材内容がたいへんで、編集に手がかかっていても「ユルい」印象になってしまう。
もちろん「ユルい」のが好きな人もいるので、そういうのを目指したい場合はそうするといいと思う。